分岐点は27歳。“きれいの黄金比”を自分の核に。
27歳、34歳、42歳、46歳は、藤原美智子が自らの経験を踏まえて「きれいの分岐点」と呼ぶ年齢。多くの反響をいただいた「46歳の分岐点」シリーズに続き、今回は「27歳の分岐点」について語ります。これから分岐点に立つ方も、通り過ぎた方も、人生を豊かにするヒントを見つけて。
Photo:Sachiko Horasawa
最初の分岐点。現状維持で通過するか、立ち止まってよく考えるか
――美智子さんが考える「きれいの分岐点」は27歳が最初なのですね。
多くの人が社会に出て働き始める20代は“いっせいのせ”で、それぞれの人生が始まっていく年代ですよね。だから、環境はそれぞれだけれど、どんな仕事でも最初はみんな新人。仕事を一から覚えなければならないし、右も左もわからなくて、毎日が精一杯。それが、数年経つと仕事に慣れてきて、ちょっと余裕が生まれてくる。人は余裕が出てくると、立ち止まって、ふと「私は本当にこれでいいのかな?」などと、考える生きもののようです。それが、27歳ごろ。私自身もそうだったし、周りの女性を見ていても、27歳が“最初の分岐点”という気がします。
――10代後半から20代前半にかけても、進学や就職といった分岐点がありますが、27歳の分岐点はそれまでと何が違うのでしょうか?
27歳って“社会の中にいる自分”というものが色濃くなってくる時期だと思うんです。それまでのように自分のことだけを考えればいいというわけにはいかなくなるし、さまざまな事情を踏まえて選択しなければいけなくなる。そうした意味で私は人生における最初の分岐点になるのではないかと考えています。その分岐点に立ったときに、「今が楽しければいい」と現状維持で通過することもできるし、「私は一体どうしたいんだろう」と、一度立ち止まってよく考えてみることもできる。どちらが幸せかはわからないし、どちらにすべきとも言えないけれど、仕事にしても恋愛にしても、30代に向けて大きな選択になるのは確かだと思っています。
“漠然と考える”よりも“目で確認”して、思考をクリアに
――美智子さんは27歳の分岐点をどのように過ごしましたか?
前回のコラムでも少しお話しましたが、27歳の頃、隣の芝生ばかり見ていた時期があったんです。「Aさんのヘアメイクは華やかだな」とか「Bさんのヘアメイクはすごくトレンド感があるな」とか。自分も真似をしてやってみるのだけれど、なんだか好きな仕上がりにならなくて、途中でやり直したりしていたんです。そうした試行錯誤を繰り返す中で、周りと比べるよりも、自分の個性や表現方法を突き詰めることが大切だと気づいて、「隣の芝生を見ている暇があるなら、自分の芝生を青くしよう!」と腹をくくったんです。長期休暇を取って、友人の住むロスに1ヶ月滞在するなど、自分と向き合う時間を作ったりもしました。
――自分と向き合うことで、見えた答えはありますか?
「自分らしいものを生み出せる人になりたい」というのが私の答えでした。そのためにはまず、自分がどういうものを美しいと感じるのかをしっかりと把握しなければいけない。そこから、メイクやファッション、インテリアなど、いろいろなジャンルのスクラップブックを作ったり、自分の思考をひたすら紙に書き出すという作業を続けたんです。頭の中で“漠然と考える”よりも、ビジュアルや文字にして“目で確認”するほうが思考はクリアになることもわかりました。そうした作業を通じて、私は「定番7割、流行3割」のバランスが好きだということに気がついたんです。
Photo:Sachiko Horasawa
「7:3」の黄金比を自分の核に。分岐点には人生のヒントがある
――現在に続く美智子さんの“きれいの黄金比”は27歳の時に生まれたんですね。
そう。「定番7割、流行3割」という黄金比を自分の核としてやっていこうって腹をくくったのが27歳。あの時、分岐点でちゃんと立ち止まって、じっくり考えて本当によかったなと思います。なぜならば、その後、自分の方向性に合った仕事がちょっとずつ増えていったから。周囲にも私の個性やスタイルというものが伝わるようになったからだと思います。もちろんそれは、私個人の経験から話していることに過ぎないのだけれど、もし27歳を過ぎても、自分の人生にどこか納得できなくてモヤモヤしているとしたら、それは最初の分岐点をなんとなく通過してしまったからかもしれない。そんなふうに立ち返ってみると、これから先の人生を豊かにするヒントが見えてくるんじゃないかなと思います。
――流れに乗ってきたところであえて立ち止まったり、決断したりすることは、なかなか勇気がいることでもありますね。
そうですね。でも、人生ってどこかで必ず決断しなければならなくなる時がくるんですよね。そして小さくても大きくても、分岐点に立った時には腹をくくる必要があって。勇気がいることかもしれないけれど、一度腹をくくってしまえば、その後は進むべき道を進むだけだから気持ち的には楽だし、いくつになっても決断が遅すぎることはないと思っています。50代、60代にも分岐点はありますが、女性の20代後半から40代にかけては分岐点続きで、すごく濃密で大切な時期。だからこそ、自分の経験を活かして、その年代の女性たちの背中を押してあげられたらと思っています。34、42歳の分岐点については、またいつかお話しますので、楽しみにしていてくださいね。