愛犬との暮らしが教えてくれること。

3月20日は動物愛護デー。長年にわたり愛犬と暮らす藤原美智子が、その出会いから現在の介護までを語ります。

40歳で運命の出会い。独身時代をともに歩んだアデラ。

――美智子さんが愛犬と暮らし始めたのはいつからですか?

子どもの頃実家では犬を飼っていたけれど、狩猟犬で怖かったので、ペットという感覚はあまりなかったですね。大人になってから犬を飼い始めたのは意外と遅くて40歳のとき。人に付き合って何気なくペットショップに行ったら、とても可愛いキャバリアに出会ってしまって。ゲージから出してもらって抱っこしたら、もうダメ(笑)。撮影帰りだったけれど、ペット用品も一式買い揃えて、連れて帰ることになりました。名前は「アデラ」と名付けました。

――愛犬アデラと暮らし始めて、生活はどう変わりましたか?

当時は独身だったのですが、「家族ができた!」と嬉しかったですね。そして仕事がどんなに忙しくても面倒を見なければという責任感も生まれましたし、毎日散歩に行くようになって生活にメリハリがつきました。でも、アデラは生まれつき心臓が弱くて。定期的に通院していたのだけれど、8歳の時に心臓発作で亡くなってしまったんです。海が大好きだったから下田の家でも暮らさせてあげたかったなと思います。

結婚とともに迎え入れたアルフ。可愛さと優しさにときめいて。

 ――現在の愛犬アルフとはどのように出会ったのですか?

私はアデラが亡くなった後、もう悲しい思いはしたくなくて、犬を飼うのはもういいかなと思っていたの。でも、結婚する時に夫が「ポリッシュ・ローランド・シープドッグを飼いたい」と言い出して。ブリーダーのウェブサイトで写真を見た時に、売れ残っていて、ちょっと拗ねているような顔をしているアルフを発見(笑)。それがたまらなく可愛く見えたの。結婚と同時に、生まれて間もないアルフを迎え入れたから、結婚歴=アルフの年齢なんです。

――運命の出会いだったんですね。

運命を感じたのは私よりも夫で(笑)、「アルフ」と名付けたのも夫なんです。もともとポーランドの羊飼いの犬種なんですが、群れの中にいて外敵が群の中に入って来たら吠えるのが役目。機敏に動く犬種じゃないの。今はもう17歳の老犬で寝たきりだし、認知症もあるのだけれど、それでも朝食の6時、おやつの16時半、夕食の18時なると、元気に吠えます(笑)。その時刻が見事に正確で、野生の体内時計ってすごいなと感心しています。

――犬を飼うことの喜びはどんなところにあると思いますか?

「可愛い!」って心がときめくことと、暮らしの中に喜怒哀楽が生まれることかなと思います。子どものときは粗相やイタズラが多くて手もかかるし、叱ることも多いけれど、そのうち気持ちが通じ合うようになって相棒のような存在になっていくの。アルフは優しい性格で、私が落ち込んでいると心配そうな顔をして「どうしたの? 大丈夫?」という顔で慰めてくれるの。その顔がたまらなく可愛くて、泣きマネもよくしました(笑)。そして、いつの間にか私よりも年上になって、今は「老いる」という過程を教えてくれているように思います。

愛犬介護で眠れぬ日々。後悔しないよう、今を大事に。

――半年以上、アルフくんの介護をされているそうですね。

心臓発作を起こして動物病院を受診した時に「そろそろ覚悟しておいてください」とお医者さんに言われてからちょうど1年経ちます。どうやらアルフは生まれつき心臓が強いみたいです。今も食欲はあるのだけれど、固形物が食べられないので、食事は野菜スープとドックフードをブレンダーでトロトロにしたものをあげています。寝たきりで全身床ずれなので時々向きを変えてあげなければならないし、認知症で夜中にも吠えるので、介護生活はなかなか大変。実はここ半年以上、アルフの介護でちゃんと寝れていないんです。夫はいくら吠えてもぐっすり寝られるタイプなので、本当に羨ましい限り(笑)。

――アルフくんの介護のために、拠点も下田に移されて。

東京だと夜中の泣き声が近所迷惑になってしまいますからね。今は基本、夫が下田の家で見てくれていて、私も東京での仕事がある時以外は下田に滞在しています。年齢的にもアルフが私たち夫婦の最後の犬になると思うので、悔いのないようにしっかり看取ってあげたいですね。

――命の尊さを感じますね。

体がボロボロになっても最期まで生きようとするアルフの姿を見て、命には必ず終わりがあるんだということをいうことを改めて感じます。人間の一生は犬の一生とはスピード感が違うけれど、人間誰しも歳をとっていくし、あっという間に時間は流れていきます。だからこそ、自分のことも周りのことも後悔しないように、今を大事に生きていきたいですね。