藤原美智子と考える、 「女性らしさ」の今。

――去る3月8日は「国際女性デー」。イタリアでは男性から女性へ日頃の感謝を込めてミモザの花を贈る習慣があり、別名「ミモザの日」とも。働く女性のロールモデルとして時代の先端を走ってきた藤原美智子が考えるジェンダー平等、そして今の時代の「女性らしさ」とは?

互いの違いを認め合い、高め合えることが平等だと思う

――日本でも「国際女性デー」の認知度が年々上がってきていますが、美智子さんはジェンダー平等についてどのように考えていますか?

ジェンダー平等に関しては、立場によっていろいろな意見があるけれど、私自身は「平等を主張する」よりも、互いの「違いを認め合う」ことが大事かなと思っています。そもそも、男性と女性では体の作りも脳の働きもホルモンも違うので、そうした生物学的な違いはどうすることもできないですよね。だから、理想論かもしれないけれど、男性も女性も互いの違いを認め合って、高め合えること。それが「平等」を目指す上での一つのゴールになるんじゃないかなと思うんです。

ジェンダーではなく人間力。広い視点で物事をとらえるために

――美智子さん自身は、これまでのキャリアにおいてジェンダーの課題に直面したことはありますか?

時代とともに男性も増えてきていますが、私がヘアメイクをやっていた頃は周りを見渡しても女性ばかり。俳優さんも編集者も圧倒的に女性が多くて、まさに女の園だったの。女性はフットワークが軽い人が多いし、おしゃべりも弾んで楽しいのだけれど、一方で女性は女性に厳しいという面もあって。それについて悩んだこともあったけれど、「仕事の基本は、まずは仕事ができることだ」と考えるようになったんです。女性云々の前に、仕事ができない人のところに仕事はやってこないというのは大前提。それであれば、ヘアメイクが上手になることに集中しよう、と。目の前のことに必死になっていたら、いつの間にか悩むことはなくなりました。

――後進を育てるという点でも、ジェンダーを意識したことはないですか?

一切なかったです。私は女性も男性も関係なく、一人の人間として接していました。すごく当たり前でシンプルなことですよね。仕事に取り組む姿勢や能力こそが大事で、そこに男性も女性も関係ない。ジェンダーではなく人間力が大事なんだって。そうした視点で物事を捉えていくべきだと思っていたし、私自身、いろいろな人の意見を聞いたり本を読んだりして、思考を広げるようにしています。

――今でも思考を広げる努力をされているんですね。

もちろんです。いろいろな立場や考え方の人がいることを、いつまでも自然と意識できるようでありたいと思っています。ニュースを見たり読んだりするのはもちろん、たとえば息抜きに小説を読むことだって、いろいろな人の考え方に触れることになる。難しく考える必要はないけれど、年を重ねるほど思考は凝り固まっていきがちになると思うので、いろんな世界や考え方に触れるよう意識しています。

違いを理解して包み込む、強さのある優しさを

――美智子さんが考える、今の時代の「女性らしさ」とは?

本来、「女性らしさ」というのは、強さのある優しさだと思っているんですね。いろいろな立場の人がいることを知り、古い価値観や周囲の雰囲気に流されることなく、それをしっかりと包み込んであげられる。そのためには、強さも優しさも両方必要ですよね。誰かを排除したり、誰かと対立したりするのではなく、違いを理解して包み込める強さのある優しさ。それは昔も今も変わらない女性らしさなんじゃないかなと思うんです。そうした女性ならではの強さが今、より必要になってきているように思います。

――強さのある優しさを持つ女性、素敵ですね。

そういう女性が増えると、世の中とってもスムーズに回っていくんじゃないかなと思うし、自分の中の女性らしさを発揮できるように感性や思考を磨いていく努力は忘れないようにしたいと思っています。「ウーマンリブ」の時代は男性と対等になれる強さが求められていたけれど、今は全てを包み込むような「母性の強さ」が必要な時代のように思うし、時代とともに変わっていく「女性らしさ」をキャッチしながら、思考のアップデートをしていきたいですね。