大人の友情は、つかず離れず心地よく。
旧知の友人と集まる機会も多い師走。歳を重ねるごとに変化する大人の友情について、藤原美智子が語ります。
Photo(portrait):Sachiko Horasawa Text:Sachiyo Kamata
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互いの人生をリスペクトし、認め合えること
――美智子さんは大人の友情について、どんなふうに考えていますか?
独身を謳歌していた20代〜40代は、たくさんの女友達とつるんでいましたね。でも、大人になるにつれ、いつも一緒でなくても大丈夫と互いに思える人が残っていきました。それぞれの人生が忙しくて会う機会は減ったとしても、それで友情が壊れる相手ではない相手と言えばいいでしょうか。でも、必要なときには駆けつけるし、久しぶりでも会えていなかった時間はすぐに埋まるし、つまり、互いの人生をリスペクトし、認め合っているということなのだと思います。
――生活環境や人生経験が異なると、考え方や価値観もそれぞれになってきますよね。
結局、長く続く友人というのは、自分と価値観が似ているタイプだと思います。そうじゃない人は、どちらからともなく離れていくけれど、それでいいんじゃないかしら。若いときは、いろいろな人と知り合うことに意義があるし、ライフステージによってはママ友とか仕事仲間といった付き合いも必要になる。その時々で付き合いたい人と付き合えばいいと思います。でも、年齢を重ねると、だんだん形式上の付き合いは面倒に感じてくるし、必要性もなくなってくるんですよね。自分の価値観と合う人とだけ一緒にいたいと思うようになるし、自然と無理をしなくなる。私も今が一番ラクです(笑)。本当に会いたい人、付き合いたい人だけ付き合えるって、すごく自由で快適ですよ。
距離感を大事にすることが、相手への敬意になる
――古くからの友人が変わってしまうのは寂しいという声もよく聞きます。
「変わっちゃったな」と感じて、友達のことを嫌いになってしまいそうなら、一旦距離を置いた方がいいこともあります。人を変えることはできないし、それぞれの人生なので、一歩引いて相手を尊重することも大事だと思うの。だって、いくら友達でも、相手の人生の全てを引き受けることはできないでしょう? それだったら、しばらくそっとしておいて、また付き合えると思った時がきたら付き合えばいい。距離感を大事にすることこそ、相手に対して敬意を払うということだと思います。
――踏み込んでいくことだけが友情ではない、と。
相手が相談にのってほしいと言うのであればもちろんそうすべきだし、「これはちょっとまずいかも」と思うようなシリアスな場合は、それとなく忠告してあげたほうがいいし、ケースバイケースですよね。「何でも自分の意見を伝えるのが正しい」ということだけわきまえておけばいいのではないかしら。夫婦関係と同じで、友人関係も歩み寄りが大切。ただ単に自分の感情を押し付けるだけでは、相手は「それって本当に私のことを思って言ってるのかしら?」と思うかもしれないし、そうしたら聞く耳を持たなくなると思います。
相手の成長を喜び、旅立たせてあげることが友情
――優しさと押し付けは紙一重なのかもしれないですね。
若いときの友情って、エゴの押し付け合いみたいなところがあるでしょう(笑)? でもそれだとケンカになることもありますよね。大人になればなるほど人間関係がラクになるのは、それぞれが人との距離感をうまく測れるようになるからだと思います。
――友達のような親しい関係こそ、距離感と敬意が大事なのですね。
本当にそうだと思います。相手に変わらないことを望むことは、裏を返せば、変わってしまうと自分から離れていくのではという怖さ、あるいは嫉妬の現れということもありますよね。だからそれは、自分のためであって、相手のためじゃない。良い変化なのであれば、相手の成長を喜んで、気持ちよく旅立たせてあげること。それが友情ということではないかなと私は思います。それぞれが旅をして、また合流できる日が来るかもしれないし、それまでに自分自身の人生を充実させることができたら素敵ですよね。これは親子や夫婦関係にも言えることだけれど、まずは自分が一人の人間として、ちゃんと立つことが大切。精神的な自立があってこそ、心地いい人間関係は築けるのだと思います。