「いい夫婦」になるために。大切にしている、3つのこと
11月22日は「いい夫婦の日」。結婚17年目を迎える藤原美智子が夫婦関係の築き方や話し合いのコツについてたっぷりと語ります。
Photo(portrait):Sachiko Horasawa Text:Sachiyo Kamata
最初から「いい夫婦」なんていない。話し合いと、期待と、諦めと
――美智子さんにとって「いい夫婦」とは、どのようなものでしょうか?
「いい夫婦」って定義が難しいですよね。人によっても違うし、組み合わせによっても変わるものですから。これぞという正解があるわけではなく、二人でいい関係を作っていこうとする姿勢を持っていることが「いい夫婦」ということではないかしら。それに、最初から「いい夫婦」なんていないと思うんです。人生いろいろなことがあるなかで、話し合ったり、諦めたり、期待したりしながら、互いにとって居心地の良い人間関係になっていく。話し合い・期待・諦めの三位一体感が「いい夫婦」のエッセンスなのかなと思います。
――なるほど! 三位一体感のバランスについて教えてください。
イメージとしては、まんなかに「話し合い」があって、両サイドに「諦め」と「期待」が同じくらいの割合であるという感じです。「話し合い」というのは互いの努力なくして成り立たないもの。努力を放棄したら夫婦関係は終わりかなと思うので、これが軸になるかしら。「期待」というのは、話し合うことでふたりの関係がよくなっていくだろうという「期待」。希望とも言えるかもしれませんね。ただ、期待が大きすぎると落胆も大きくなってしまうので(苦笑)、ある程度の期待と、ある程度の諦めで作っていくのが夫婦関係なのかなと思います。
――結婚当初は「期待」が大きく、年々「諦め」の割合が増えていくような気がします (笑)。
「諦め」という言葉はネガティブに捉えられがちだけど、夫婦にとっての「諦め」はふたりの間柄を改善していこうという前向きな姿勢だと私は思っています。人間ってどうしても理屈で割り切れないところがあるもの。いい・悪いで区切るのではなくて、「そうだよね」「しょうがないか」と思える許容性がないと人間関係は深まっていかないし、一緒に暮らしていけないと思うんです。それに、「諦め」が人間としての器を広げてくれることもあるの。だから「諦め」は相手のためであり、自分のためでもあるものじゃないかなと思います。
夫婦関係にこそ「戦略」は必要。不満は1つずつ小出しに
――話し合いにおいては、伝え方も大事ですよね。美智子さんはどんなことを心がけていますか?
言いたいことははっきりと言うけれど、言い方を変えたり、ここまでは言うけれどこれ以上はやめておこうとか、ちょっと小出しにしてみようとか、夫の性格や反応を踏まえながら戦略を立てています。だから、すごく頭を使うの(笑)。
――戦略って必要ですよね(笑)。
夫婦関係こそ「戦略」は必要じゃないかなと思います。まれに「結婚してから一度も喧嘩したことがない」というご夫婦もいらっしゃるけれど、ほとんどの方は無意識のうちに戦略を立てたり、駆け引きをしたりしているのでは(笑)。わが家は互いに言いたいことは言うタイプなのですが、たまに、ちょっと時間を置いてから言ったことがいい場合もあって……やっぱり頭を使いますね(笑)。
――互いに忙しい日々を送る中で、向き合う時間がなかなか取れず、あれこれと不満を溜めこんでしまうという人も多いと思います。そんな方にはどうアドバイスされますか?
まずは何が一番不満なのかを考えてみるのがいいんじゃないかしら。あれもこれもといっぺんに言うと、それはただの「愚痴」になってしまうので、「これだけは嫌」「どうしても考えてほしい」と思う1つに決めて、それをちゃんと話し合ってみる。切り出す時もいきなりぶつけるんじゃなくて「実はずっと我慢していたことがあって、あなたの性格や事情はわかっているけれど、このことに関してだけはどうしても考えてほしいの」って。一歩下がったり、上がったりして面倒だけれど、これも戦略の一つです(笑)。
永遠に続く保証はないからこそ、今しっかりと向き合うことが大切
――いっぺんに解決しようとしないことが大事なんですね。
話し合いを始める前にもう一つ大切なのは、「自分は今後どうしていきたいのか」という方向性を決めるということです。例えば「私はこれからもあなたと一緒に人生を歩みたいのだけれど、やっぱりここだけはどうしても〇〇してほしいの」とかね。人は急には変われないけれど、何か1つ変わると、それに付随する他のことも自然と変わっていくことがありますよね。だから、それでしばらく様子を見て、まだ不満に思うことがあれば、同じように1つずつ小出しにしていけばいいんじゃないかしら。その間に夫婦関係もちょっとずつ変わっていくでしょうし。
――話し合いのつもりがつい喧嘩になってしまうこともあります。
喧嘩してしまったときには、今の生活で相手がいなくなったらどうなんだろうと想像してみるといいんじゃないかなと思います。やっぱり寂しいと思ったら、どこかを我慢したり、ちゃんと話をしたりした方がいいけれど、清々すると思ったら離婚という選択肢もあり得るのではないでしょうか。夫婦の一寸先は光なのか闇なのか、本当にわからないもの。永遠に続くという保証はないからこそ、今目の前にいるパートナーとしっかり向き合うことが大切かなと思います。
素の自分を受け入れてくれる相手がそばにいる幸せ
――夫婦関係の極意は、人間関係全般に通じることかもしれませんね。
人間関係の縮図が夫婦関係ですものね。一番近くにいる存在であり、一番遠くに感じられる時もある。それに、家庭ごとに形もいろいろ。夫婦って本当に不思議で面白い関係性だなと思います。
――最後に、美智子さんが感じる「夫婦の良さ」を教えてください。
どんな時も一番の味方であり、心から信頼でき、素の自分を受け入れてくれる。そういう相手がそばにいるって、けっこう幸せなことなんじゃないかなって思います。