分岐点は34歳。 直感と勢いを大切に、後悔のない人生を
藤原美智子が自身の人生のターニングポイントを振り返る「きれいの分岐点」シリーズ。大反響の46歳編、27歳編につづき、「34歳の分岐点」をお届け。実感のこもった言葉の一つひとつが、前向きな人生の決断を後押ししてくれるはずです。
除夜の鐘を聞きながら、責任のある人生を体験してみようと思った
――美智子さんにとって「34歳」は、どういう分岐点だったのでしょうか。
34歳は、ヘアメイク事務所「ラ・ドンナ」を設立した年齢です。それまではずっと自由な人生を送りたいと思っていたけれど、33歳の終わりが近づいた大晦日、除夜の鐘を聴きながら「そろそろ責任のある人生を体験してみるのもいいかな」って、ふと思ったの。その頃、よく周りの人から「事務所を作ればいいのに」と言われていたので、やってみようかな、と。人生が大きく動きだした瞬間でした。
――決断から行動に移すまで、時間はかかりませんでしたか。
事務所をオープンするまでは4ヶ月くらいしかかかっていないんです。お正月明けに早速当時所属してた事務所のマネージャーに「事務所を作ろうかなと思うんです」と伝えたのね。きっと引き止められるだろうなと覚悟してたんだけど、「藤原さんはその方がいいわよ!」って大賛成されちゃって、やるしかない状態に(苦笑)。それなら事務所のオープンは4月20日にしようって、ふっと日付が浮かんで。後で気がついたのだけど、その日は母親の誕生日だったんです。やると決めてからはもう大忙し。会社設立の手続きや融資なども初めての経験だったし、その間に海外ロケに行ったり、マンションを購入してリフォームしたり……。怒涛の勢いで準備している合間に34歳の誕生日を迎えました。
大変さも喜びも倍に。感情の幅が広がり、人生の基盤ができた
――美智子さんの行動力、すごすぎます!
私は何事も勢いがないとできないタイプなんです。用意周到にしているうちに飽きてきちゃって実現しないパターンになると思います、きっと(苦笑)。行動力がある反面、ヒヤヒヤすることもしょっちゅう。事務所を設立する時も、電話の開通がオープン日に間に合わないかもしれないと言われて……。「もう関係各所にハガキを出してしまったんです」と掛け合ったら「なんとかやってみます」と言ってくれて、無事間に合いました。そんなふうに周りに話をして助けてもらうことも多かったですし、思いつきではあったけれど短い締め切りを作ったからこそ、突っ走れたんじゃないかなと思います。
――事務所設立にあたって、何か思い描いていたビジョンはありましたか。
当初は個人事務所にしようと思っていたので、私とマネージャーとの2人体制だったんです。でも、事務所設立の取材記事が雑誌に載ると、それを見た人からアシスタントになりたいという電話がかかってきて……。悩んだのですが、責任ある人生を体験することが事務所設立の目的だったし、マネージャーからの勧めもあって雇ってみることにしたんです。そこからアシスタント応募がどんどん来るようになって、その人たちが一人前に育って、事務所の所属アーティストも増えていって……。「ラ・ドンナ」という場所が、自分の人生の基盤になっていきました。
――責任ある人生を実際に体験して何か変わったことはありますか。
一番大きかったのは、自分のことだけじゃなく、人のことを一生懸命考えるという思考が身についたことかしら。誰かの人生の責任を負うということは、大変さも倍になるけれど、喜びも倍になる。感情の幅が大きく広がった気がします。大変なこともいっぱいあったけれど、後悔は全くないです。私、人生の中で後悔したことって一度もないと自分では思っています。
後悔したくない。短所を長所に変えたい。だから、走り続ける
――後悔のない人生……かっこよすぎます!
たぶん、人生後悔したくないから一生懸命にやるんだと思うの。正しいか、正しくないかは、その後の行動で決まるわけで、最初からそれを考えていたら動けない。道を切り拓いていくには、やっぱり直感と勢いしかない気がします。自分で締め切りを設けて、インスピレーションを得たことをどんどん実行していく。現実的な締切がないと勢いがつかないタイプなので、そういうふうに自分をコントロールしている部分はありますね。
――大人になればなるほど、後先考えすぎて、勢いで行動できなくなるような気がします。
逆に、私は先々まで考えられないから勢いで行動できるのかもしれませんね。でも、それって裏を返せば短所でもあるんですよね。勢いで走り出したら結果がちゃんと出るところまたどり着かないと、長所にはならない。そのことを経験を通して学んできたから、事務所を設立してから30年間ひたむきに走り続けてこれたんだと思います。ゴールもコースも人それぞれだけれど、自分の短所をいかに長所に変えていくかということは、誰にとっても人生の大きなテーマになりうるのではないかしら。
最初は怖いし、正解はわからない。それでも自分の背中を押して
――背中を押される言葉です! 考えすぎてしまって行動できないという人に、ぜひアドバイスをお願いします。
小さいことでも何でもいいので、とにかく思ったことを行動に移すということを習慣づけてみるといいんじゃないかなと思います。私は美容学校を卒業する間際に、後に師匠となるヘアメイクアップアーティストの記事が載っている雑誌を見て、すぐにアシスタントに応募しました。怖くてドキドキしたけれど「えいや」っと飛び込む気持ちで電話をかけたの。事務所を設立する時も、バレエ教室に通い始める時も、YouTubeを始める時も、最初はとても怖かった。何でも、誰でも、最初は怖いものなんです。違いがあるとしたら、それをやるか、やらないかだけ。もしやりたいのだったら自分で自分の背中を押すしかないの。今、何か始めたいけれど怖くて踏み出せないという人がいたら、思い切って自分で自分の背中を押してみてほしいです。きっと人生が動き出すはず!と思います。