ナチュラルに、ミニマルに。 香りで気持ちを整える。
とどまることを知らない、フレグランスブーム。香りの種類も取り入れ方も多様化する今、藤原美智子が自身の香りとの付き合い方を語ります。
香りで自分を表現するよりも、香りを自分らしく使いこなしたい。
――空前のフレグランスブームが続いていますが、美智子さんはこれまでどんなふうに香りと付き合ってきましたか。
若い頃は「自分の香りを見つけなきゃ」と思うところもあって、有名メゾンの香水をいろいろとつけていたこともあるけれど、今は香水をつけることはほとんどなくて。象徴的なフレグランスをまとって自分の個性を表現するよりも、暮らしの中にある身近な香りを自分らしく使いこなしたいという気持ちが大きいです。
――どんなふうに香りを使いこなしているのですか?
庭で育てているハーブをアロマとして使っています。例えば朝は爽やかなミントの香り、ちょっと疲れてくる午後は頭が冴えて元気になれるローズマリーやタイムの香り、夜はリラックスできるラベンダーやカモミールの香りといった具合に、なりたい気分になれるように香りを使い分けています。
ハーブの香りで気分をコントロール。内側から自分の香りを作る意識も。
――下田のご自宅での撮影時も、庭のミントをさっと摘んでテーブルに飾っていましたね。
ミントをテーブルに飾っておけば目にも涼やかだし、葉を指先で少し揉んで香りを嗅げばそれだけでいいリフレッシュになるんです。仕事の合間にちょこっと庭に出てタイムやローズマリーを剪定すればふわ〜っと香りが広がって一瞬でシャキッとするし、夜にはカモミールティーを淹れて飲むと落ち着いてよく眠れるの。人間の五感の中で唯一脳に直接働きかけるのが嗅覚だと言われているから、香りで気分をコントロールするというのはとても有効な手段じゃないかなと思います。
――柔軟剤やルームフレグランスなども使わないですか?
私はお日様の香りが好きなので柔軟剤は使わなくて、代わりに庭のハーブをドライにしたサシェなどを引き出しの中に入れて、ほのかな香りをつけています。家で使っているフレグランスといったら、リビングのアロマディフューザーくらいかしら。空気のようにさりげなく上品に香る「DR. VRANJES(ドットール・ヴラニエス)」の「アリア ディフューザー」はパッケージが美しくてインテリアにもなじむので長年愛用しています。
――ナチュラルな香りを楽しんでいるのですね。
数あるフレグランスからお気に入りを見つけるのも楽しいけれど、自分の香りを持たなければいけないということはないし、清潔感がキープできていれば香りでカバーする必要もないんじゃないかなと思っています。香りというのは好き好きなので、自分にとっては心地いい香りでも他人にとってそうとは限らないというのが難しいところ。他人に不快な思いをさせないように、ナチュラルにミニマルに香りを楽しみたいなと思っています。
――世の中に香りがあふれる時代だからこそ、そうしたエチケットが必要かもしれません。
内側から自分の香りを作るという意識を持つことも大事じゃないかなと思っています。日本人はもともと体臭があまりないと言われているけれど、ジャンクフードや肉料理が多い食生活が続いたり、運動不足で汗をあまりかかなかったり、掃除や換気などがきちんとできていなかったりすると、匂いにも影響するので気をつけたいですね。
一瞬で懐かしい記憶を運んでくれる、香りのちから。
――香りは記憶に結びつきやすいものですが、美智子さんの香りにまつわる思い出は何かありますか。
やっぱり子どもの頃に使っていた石けんの香りかしら。30年くらい前になるけれど、コムデギャルソンの石けんの香りの香水を愛用していたこともあります。今でも石けんの香りを嗅ぐと、子ども時代の親に守られている安心感や、ひだまりの中にいるような幸福感を思い出してほっこりします。
――せっけんの香りは好きな人も多いですよね。
人によって落ち着く香りというのは違うけれど、一瞬で何十年も前の記憶が蘇ってくるのだから、香りの持つ力ってすごいなと思います。実は、MICHIKO.LIFEでも現在、私が本当に心地いいと思う香りにこだわった新作を開発しているところなんです。皆さんに発表できるのは、もう少し先になりそうですが、試作に試作を重ねていますので、楽しみにしていてくださいね。