変化を楽しむ気持ちで、人生を豊かに
新年度が始まり、陽気も春めいてくるこの時季は、大人でも何か新しいことに取り組みたくなるもの。藤原美智子が4年前から始めたというバレエを例に、チャレンジの楽しさと大切さを語ります。
視界に入る景色を変えると、気持ちも新たに
――新年度が始まる4月は暮らしも気持ちも切り替えやすい時季だと思うんですが、美智子さんは、どんなふうに過ごしていらっしゃいますか?
私は新年度が始まる4月に身の回りの整理整頓をするのが恒例なんです。新しくできた空間に新しいものが入ってくると思っているので全然苦にならないし、むしろ楽しみながらやっています。モノは大事にするけれど、捨てるときはバッサリ。別れの未練はないですね。
――モノだけでなく、人間関係でも、別れるときに未練はないですか?
もちろん、大切な人との別れは寂しいし、ぽっかりと穴が開いたようになるけれど、私は去る者は追わないタイプなんです。それに人の気持ちはコントロールできないですよね。だとしたら変化として捉えた方が人生は豊かになると思っています。
――でも、人って変化を嫌う傾向があるようにも感じます。
何かの本で読んだのだけれど、人間の脳は変化を嫌うようにできてるんですって。私は「変化こそ楽しい」って思ってずっと生きてきたから、「え、そうなの?!」ってびっくり(笑)。変化を恐れるって、もったいないように思うんですよね。確かにリスクもあるかもしれないんだけど、怖がっていたら何も始まらないし、何も進んでいかないですから。
――どうしたら、変化を恐れずに新しいことにチャレンジできるでしょうか?
まずはささいなことからチャレンジしてみてはどうでしょう。例えば、前回のコラムでお話ししたように、インテリアを変えるのもいいと思います。自分の視界に入ってくる風景を変えると、気持ちも新たになる。それが何かに挑戦する呼び水になるように思います。何事も最初はちょっと大変だったり、嫌だなと思うこともあるかもしれないけれど、やってみたい気持ちが強いのであれば、思い切ってトライしてみて損はないと思うんです。
何事も続けていれば、必ず上手になっていく
――美智子さんは新しいチャレンジとして、4年前からバレエを始められましたね。
そうなんです。大人になると、レッスンで習ったことをなかなか覚えられないし、周りはバレエ経験者や若い方ばかりなんだけど、恥ずかしさを通り越さないと先に進めないので、そこはもう割り切って。でもね、初心者でも続けていると、去年よりも一昨年よりも自分の中では上達していくのがわかるんです。何事も続けていたら、少しずつだけど必ず上手にはなっていくんですよね。だから本当にやりたいことであれば、諦めないこと。やってみて合わないのであればやめればいいだけですから。
――バレエはいつ頃からやりたいなと思ってたんですか?
子供の頃からです。でも、バレエをやりたいって親に言ったら「あなたはすぐに飽きちゃうんだから」って言われて、しょうがないから中学生のときには「バレエ」じゃなくて「バレー(ボール)」をやっていたの(笑)。社会人になって40代までは忙しくてなかなかチャンスがなかかったんだけど、50代になって少し余裕ができたので、まずはピラティスを始めたんです。
――バレエを始める準備としてのピラティスだったんですね。
そう。マインドマップを描いて、60歳までにバレエを始めようって決めて。ピラティスの先生に「ゆくゆくはバレエを始めたくて、そのためにピラティスでしなやかな体を作りたいんです」って言って。そうして60歳前くらいに「そろそろバレエを始めてもいいでしょうか?」って先生に聞いたら「もう十分大丈夫!」って言ってもらえたんです。
大人ならではの純粋さと余裕で、五感を使って楽しむ
――そこから4年間バレエを続けているんですね。モチベーションはどこにあるのでしょうか?
ただ踊ってるときが一番楽しい。それだけなんです。踊っていて、ほんの一瞬でも音楽の世界に入り込めたときの醍醐味……あれは踊っている人にしか味わえないものかなと思います。いつか曲の世界に没頭しながら踊れたら、と憧れているんですが、現実はレッスンについていくだけで大変なの(笑)。
――純粋に踊ることが楽しいって素敵ですね。
若い頃だと夢や目標に縛られることもあるかもしれないけれど、大人になるとそういうものから解放されるというか、大人だからこその余裕、純粋さで取り組めるんですよね。誰と比べるのでもなく、昨日の自分より今日の自分が上手になっているという成長を感じられることが、ただ楽しいんです。
――美智子さんの前向きな言葉で、新しいことに挑戦したくなってきました。
やる気って、自分で作るしかないし、それは豊かに生きる道の一つじゃないかなと思っていて。いろんなことがバーチャルに経験できる世界になっているけれど、身体を持って生まれてきたわけだから、やっぱり五感を使って生きていきたいし、チャレンジすることをいくつになっても大事にしていきたいなと思っています。